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【CNTR TALK 1】食前酒:自己紹介にかえて|河尻亨一|編集は生きるための知恵

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混迷な時代をSurviveするための編集力

—KANSAIから何をどう発信するかー

河尻亨一(銀河ライター/元「広告批評」編集長/東北芸工大客員教授)


おまたせしました!CNTR TALK #00 のレポートです。テーマは「編集」
いまの「編集」について、だれに聞けばいいだろう?
きっとこの方ならヒントをくれるはずと、河尻亨一さん(銀河ライター)をお招きしました。

河尻さんは、混迷な時代をsurviveするために従来の方法を破壊し、異なるメディア同士を結びつけ、新しい価値を生む 編集業界の “ヤンキー” 
33歳の時に雑誌『広告批評』編集長をされていて、現在は銀河ライター主宰として「編集」「ジャーナリズム」「広告」の垣根をこえた広いフィールドでご活躍をされています。

今回のためだけにご用意された300枚以上のスライドと軽快なトークで、熱くて濃密な3時間になりました。その様子をお届けします。
実は「編集」は、私たちみんなにとって身近で使えるスキルだったんです。


こんにちは。今日はよろしくお願いします。いきなりですが、僕は編集を料理に見立てて説明するのが好きなんですね。で、今日はお話する項目をフルコースっぽいメニュー仕立てにしてみました。最初は軽くやがてディープに、自分の考える「編集ってこういうものでは?」をご説明できればと思い、旬の素材を色々持ってきています。


私は世間からは「編集者」と呼ばれるトライブなんです、おそらく(笑)。かつては雑誌(『広告批評』)も作ってましたし、いまも色んな紙媒体だったり、ウェブメディアの編集・執筆に関わらせていただいてますから、まあ、そう言って間違いはないかと。しかし、この「編集者」という職種はくせ者でして、いまいち何やっている人かわからなくないですか?

よくある昭和なイメージとしてはですね、編集者と言うと、先生の原稿が出来上がるのを待ってる人というか、伊佐坂先生宅にひっきりなしに訪問しているノリスケさんみたいな人物像を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。実際、編集者の仕事の中には、ああいうプロセスも一部あるにはあるんです。たいした用もないのにクリエイターの周りをウロウロしている(笑)。

ちょっと余談なんですが、『ブラックジャック創作秘話』という漫画をご存知ですか? 漫画編集者にフォーカスしたとても面白い作品ですね。簡単に説明すると、連日の徹夜も惜しまずチェーンスモークで灰皿満タンにしながら、ときには原稿の遅さにぶちキレて先方オフィスの壁にパンチで穴をあけてまで、手塚治虫先生が作品を描くのをひたすら待ち続けた“編集猛者”たちのプロジェクトXなストーリーというか。まあ、クリエイターのお世話係というか、マネジャー的存在としての編集者像を、天才的作家のキャラとの対比で浮き彫りにした作品で、いまだ編集の仕事の中にはこういう要素もないわけではありません。

一方で、編集者を呼ぶ際に、“エディター”という言い方もありますよね? ハイセンスな雑誌の編集部に所属し、コム デ ギャルソン等のDCブランドを身にまとい、銀座や表参道といったイケてるスポットを徘徊しつつ、その界隈の有名カフェで「あの企画はさ~」とか言ってそうな人々というイメージなんですが、確かにこういう方々もいらっしゃるにはいらっしゃいますよね。そういうミーハー体質も、やりすぎかそうでないかは別として、この世界では重要とされております(笑)。

まあ、大きくはこのふたつか、それらの入り交じった感じが“編集者”に対する世間の大まかな捉え方かもしれず、その感想は当たらずとも言えども遠からずな感も否めません。しかし、私が今日するお話は、そういった編集の話とはまた違うエキスも多分に含まれているということを最初に強調しておきたいと思います。つまり、今日の話を聞いてくださったからと言って、オシャレな雑誌や滋味豊かな書籍が作れるようにはならないということです。

というのも理由があります。なんと言っても、いまは2010年代ですから、そこを念頭にお話したいと。怒濤の高度成長期から雑誌の黄金・成熟期としてのバブル期、そして空白の20年といまなお進行中のIT革命をへて醸成されつつある、“新しい編集マインド”とはなんなのか? そのあたりに斬り込んでみたいという思いがあるのです。

で、こういった文脈で話を進めると、なぜか速攻“ノマド”とか言い出す方がいるんです。ま、いいんですけどね(笑)。あれは基本的にスタイルやポーズ、あるいは私のようにやむにやまれぬ事情からそうなっているという類の話であって、実は編集や執筆の本質とは関係ないのですが、時代の気分としてはわからなくもない。WiFi完備の茶店で、日長一日Facebook眺めてるだけでは、何の解決にもならないとはいえ。

ようするに、一時的流行の「スタイル」や「時代の気分」に流されるのではなく、個人の「スタンス」や「スキル」、さらに言うと「アクションの道標」として考えた上でポジティブに習得したほうがトクすると思うんです、その人が。つまり、「編集」というのは僕の考えではもう少し大きな概念であり、楽しく生きるための知恵でもあります。

なぜ「編集」が生きるための知恵なのか? 徐々にそのあたりのお話に入っていきましょう。私たちの多くはいま、情報の氾濫どころか、「常時の情報ゲリラ豪雨状態の中で日々の暮らしを営まねばならず、たいして知らない人たちともつながっていなければならない」の刑に処されていますよね? 新鮮な情報や交流は刺激的ですから、これは基本的には歓迎すべき事態なのですが、まあ、あんまりやると目・肩・腰その他の部位にキますよね?(笑)

もちろん、やめることは自由なんです。「“部活”やめたってよ」的な扱いというかそれで終わりすから。しかし、実際には完全撤退は難しいですよね。特に情報・サービスといった第3次産業に従事している方の場合は…。かくのごとくなかなか世知辛い社会ですが、「もうかる・もうからない」はちょっと置いとくとして、デジタル化&情報と人材のオープン化により参入障壁が下がっているという意味では、チャレンジしやすい時代であることも事実です。そのときに編集的感覚がもっと生かせると思うんですよね。

まずは大まかな把握として、編集とは以下のスキルであると考えてください。「(1)情報整理と発信」、「(2)組み合わせによる価値創出」、「(3)それを個人や組織にひもづけてインテグレート(統合)する行為の中から生まれるブランディング(キャラクター化/世に言う“セルフプロデュース”)」です。

つまり、シーンに応じて必要な情報を選び出し、その合体でアイデアを考えて世の中に発信し、うまくいった場合は「クールなヤツだ」と褒められる可能性さえあると。いや、実際そうなんです。その意味での「編集」は、出版業以外に携わる人たちも活用出来る「時代のサバイバル術」とも言えるかもしれない。そういった行為を持続して行くことで、必然的に「(4)“物語り”を編む」ことにもなります。

やや抽象的な話にもなってきましたが、ここまでは大丈夫でしょうか? 今日の参加者の方々のように、いわゆる「クリエイティブ産業」に関わっている方たちにとって、いわばこれは必修科目と言いますか、特に日頃「編集」を意識せずに仕事をしている方にとっては、聞いておいて損することはなさそうな気もします。なんとなくそんな気もしてきたでしょう?(笑) 例も挙げつつ基礎的なところから順に話して行きますから、まあ、ビールでも飲みながら、気楽に聞いてくださいまし。



写真:綿村 健




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【1】食前酒:自己紹介にかえて
【2】前菜A:編集とはどういうコトか?
【3】前菜B:メディアニュートラルに料理する
【4】メイン:キュレーションとは何か?
河尻亨一 / Kawajiri Kouichi
銀河ライター主宰 / 元「広告批評」編集長 / HAKUHODO DESIGN / 東北芸術工科大学客員教授
1974年生まれ、大阪市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心にファッションや映画、写真、漫画、ウェブ、デザイン、エコなど多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集企画を手がけ、約700人に及ぶ世界のクリエイター、タレントにインタビューする。現在は雑誌・書籍・ウェブサイトの編集執筆から、企業の戦略立案、イベントの企画・司会まで、「編集」「ジャーナリズム」「広告」の垣根を超えた活動を行う。

TW: @kawajiring FB: 銀河ライターファンページ
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